散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

イルミネーションマナーがその対象年齢の子供たちを存分に笑顔にする傍らで、大人の観客こそノスタルジー歓喜、むせび泣く最高のファミリームービー。誰もが一度はプレイしたことのあるマリオワールドが眼前に広がり、縦横無尽の3D空間によもやの2D演出を行き来しながら、まるで横スクロールの“面”をBダッシュで駆け抜けるあの疾走感を映画全体で持続するかのよう。テーマ性の不在を気に留める間もないほど数多のギミックや効果音、キャッチーなBGMが次から次へと脳内に流れ込み、記憶の断片と重なり合う。さらには、超王道懐メロミックスの大盤振る舞いときて、否が応でも夢中にならざるを得ない。思考の隙を与えない、ノンストップで感情を揺さぶり続けるジェットコースタームービー。それは頭をカラっぽにするのとは似て非なり、無心となって映像世界へと没入する体験。いつしか大人になるほど、映画に詳しくなればなるほど失っていったあの頃の感覚がよみがえる。

エンドロールを終え、満員の劇場を後にするむしろ親御さんたちの饒舌なことよ。


☆3.9