『今日、キミに会えたら』のラストシーンを想起しながら──交わらない視線よりも雄弁で、悲痛な、見つめ合う二人の恋の終わりに息を呑む。
過去と現在、理想と現実の間を振り子のように思い巡らす人々の葛藤を映し出す、ドレイク・ドレマスのやはり巧みなカメラワーク。声にならない言葉、言葉にならない想いをチェロやピアノの旋律に奏で、あるいは静寂や雨音に語らせ、心の繊細な揺らぎからその胸のざわめきまでを青みがかった光のゆらめきに定着させる。
まさに恋愛映画の甘美なる誘惑。視線の交差で酩酊する変性意識状態に、ここではない何処かへの、つかの間の自由は解放される。
とどまることなく流れゆく時間。時間と共に失われた過去。過去との距離を埋める幻想。
そして、愚かな夢が覚めるまで。
☆4.3