平和への思いを固く誓いながら、一方でアンビバレントに世界が一変するカタストロフを心待ちにしている自分がいやしないか。
隕石雨の一つでも堕ちれば。地球外生命体とのファーストコンタクトや、あるいは宇宙“戦争”なんて勃発してしまえば。町は装甲車が行き交い、軍用ヘリが旋回し、夜には戒厳令が敷かれる非常事態。テレビもネットも世界中が一つの話題で持ちきり。人類史始まって以来の危機に立ち会えたりしたなら、どんなにわくわくドキドキできる人生だろうかと、退屈で冴えない日常に宙を眺めては、何十光年先のあるやも知れぬ惑星に思いを馳せる夕暮れもあるだろう。
平穏の続く日々よりも、限られた人生に感情を揺さぶる“アトラクション”を欲望する性。命よりも大切なものを容易く見つけてしまえる種、人間だもの。
死への恐れから愛や憎しみが生まれるのではない。愛を知ってしまったがゆえ、愛を失う恐怖から憎しみは生まれるのであることを教える何気ないキスシーンの説得力に唸るのであった。
☆3.6
(2018/12/07)
