散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

デッドプール

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“第四の壁”を越境する俺ちゃんは独りぼっち。そっちの世界にその時空を共有する者はいない。  
口を開けば飛び出すジョークの嵐も、実は“痛みを紛らわす偽笑い”だったりして。
不条理な運命を乗り越える知恵だ。真実なくして生まれ得ないユーモア。笑いに同居する不幸な歴史が切ない。
悲劇の人生を救うラブストーリーの、その照れ隠しでもあるんだ。

正論ばかりを撒き散らす優等生よりも、冗談ばかり吐き散らかしながらもいざという時にはヤル男に、人々はカリスマを見出すものである。如何ともし難いこの事実は、絶対正義など存在し得ない混沌の世界のリアリティー
悪いことと可能なことの間を漂いながら、その折々に為すべきことを為す。白と黒とで割り切れない善と悪に苦悩を続けるスーパーヒーローたちを横目に、赤と黒トリックスターは己の体に刻まれた哀しみと愛の尺度でそんな議論を一人超越する。

世界のヒーローはパートタイムで。フルタイム、君のヒーローでありたい。そして、必然的に両者が重なる時、揺るぎなき正義の旗は掲げられる。


☆3.8

(2017/09/03)