普通なら120分以内に収めるはずのプロットを180分に引き延ばし、大仰にも70mmのワイドスクリーンでロードショー方式まで指定して自らの映画愛を作品化するなど、そんなことやろうとするのも、許されるのも映画界にただ一人。
そんな奇作はタランティーノ映画なるもののエッセンスが濃縮された、円熟すらを感じさせる傑作だった。
真実と“嘘”が織り交ぜられた会話劇は、終始、じりじりと高まる緊張感を持続する。時に暴発するバイオレンスの引き金ともなり得る無駄話は、ロジカルな対話であるが故に面白い。
人と人の間合いを揺さぶり、緊張と緩和を支配するタランティーノの映画術。
“間”というのは、おそらくあらゆる芸術に通ずる神髄であろう。
☆3.9
(2017/7/08)