散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

彼は秘密の女ともだち

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愛する者との死別ほど悲しい出来事はなく、その喪失感はとても埋め合わせることなど出来ないもの。
人生は一旦そこで止まる。再び歩み始めるきっかけは人それぞれにあるとしても、何でもいい、心の隙間に注がれる失ったものの代わりが必要である。
大きな穴であるほど絶望は深いが、その分、人は変わることが出来るとも言い換えられる。欠落を補完しようと欲することが人生の原動力であり、希望になり得るからだ。

悲しみに打ちひしがれる“彼女”に訪れたきっかけは、対になる喜びや癒しとはまた違う、予期せぬ方向に揺れる感情の振幅だった。
嘘の裏側の本当のことを打ち明けられる“彼女”は秘密の女ともだち。
秘密を共有する“彼女”に導かれ、見出される本当の自分。
ありのままに近づくほど、曖昧だった感情は輪郭をあらわし、現在に芽生えた想いは熱を帯び、過去は思い出に変わっていく。

同性と異性、友情と愛情をオーバーラップし、非対称性を自覚するほど強固に結ばれる二人の“彼女”。

はじまり、空席の隣席に待ち望んだ少女との出会いは、一目惚れだった。
あの日、親愛なる親友と血を混じらせた永遠の約束は、今も誓われたまま。


☆4.3

(2017/4/26)