仕事への野心、情熱を饒舌に語る彼。目を輝かせて、少年みたい。予防医学のことなんてちっともわからないけど、ずっと話を聞いていたい。見とれていたい。
彼女は恋に落ちてしまった。
また木曜日に。
汽笛が鳴るまでの時間に許された、逢びき。
彼は愛していると言った。彼女もそう言った。
それでも、“多すぎる障害”を乗り越えはしなかった。
「人目を恐れ、嘘をつく。それが幸せを押しつぶす」
良き夫と愛する子どもたちの待つ、“平穏”へ帰る。
「永遠に続くものなどない。幸せも絶望も。人生だって。今に平気になる時が来る。なんてバカだったかと思える時が。…イヤ、そんなのはイヤ。あの一瞬一瞬を覚えていたい。いつまでも一生」
彼は思い出の人になった。
「遠くへ旅したね。よく戻ってきたね」
夫は妻の涙を受け止める。
「許してほしい。何もかも。君に出会った事も、愛してしまった事も、つらい思いをさせた事も。」
☆4.3
(2016/04/28)