散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

わたしはロランス

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まるで言語を操るように、表現することを身体感覚の内に体得している人。そういう才能を、“天才”と呼びたい。
不得手を装わない限り、天才作家は駄作を作り得ない。

ズバ抜けた画作りの“運動神経”でもって、ハイ・テンションとハイ・エモーションが駆け抜ける168分。そんな構図の連なりでストーリーを物語る編集のセンス。リズム感。
傑出して今作だ、才能が爆発している。芸術が爆発を。

「その格好は何?」
アンナ・カリーナよ」

たわいない台詞。アンナ・カリーナとは、ゴダールの嘗てのミューズ。編集を“呼吸”するゴダールの。愛を“歌って”いた頃のゴダールの。
19歳の処女作『マイ・マザー』でのカンヌデビューより、ついに今作より2年後、25歳での監督第5作『Mommy/マミー』で、カンヌの審査員賞をゴダールと同時受賞する。

“映画そのもののような人”。即ち、天才たちの一人となったドラン。“スペシャル”。

映画を、「人生に対する復讐の手段」と語るドラン。でも、彼の映画にシニカルが影を落とすことはない。

「怒りの色」「血の色」「誘惑の色」「情熱の色」
「赤を、もっと赤を!」

ロマンティックな彼の復讐を追い続けたい。


☆4.6

(2016/04/30)