散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

THE FIRST SLAM DUNK

わかりきった結末をなぞる、スローモーションの無の境地。そのカタルシスはまさにゾーンの追体験。身体性を伴う感情の揺らめきにこそ人は動かされる。

さりげなくも、やはり。「あきらめたらそこで試合終了」という不屈のメッセージが、宮城リョータにさえなれなかった凡才の、暗く閉ざされた魂を云十年ぶりにも奮い立たせる。

これでもかと原風景の散りばめられた郷愁に、あるいは辿りえなかった成長の道程に、憧憬を悲しみの底より抱く。あまりにも王道、あまりにも移入過多な持たざる男のサイドストーリーに、あの頃を、今にも通ずる挫折を重ねては嗚咽を押し殺す。凡庸、でも何だろうと、どうしようもなく胸を打つ──ドリブルのリズム。コートを揺らすグルーヴ。とめどなく溢れ出す感情にマスクを濡らす。

観客席より母のまなざしを背に、遠く海の向こうへと惜別を送る。
放蕩息子の帰還。新たな旅立ちを意味する「おかえり」。

いつだってまた始めればいい。

過去に置き忘れたバイブルを再び手に、物語の再構築へ。あの頃の分水嶺を越え、さらなる原点に立ち返るとき。


☆4.8