散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

悪魔がみている

あえて言えば、たんなるホラー映画にあらず。躍進する女性監督によるフェミニズムホラーの一種(という言葉で棲み分けをしてしまっては元も子もないのだが)。ある種の当事者性と、特権性をもってグロテスクなほどの性的なメタファーをジャンル的枠組みに掛け合わせる怪作。一つの潮流として、野蛮な男性性に向けられる容赦ない断罪のまなざしは今作にも通底するところ。爽快感さえ窺わせる、あるいはぞっとするほどの高笑いを響かせる。虐げられし者たちの悲痛な叫びを、自由と解放へのカタルシスへと昇華させる。例えば『ぼくのエリ』を裏返しにしてみせるかのような、そんなロマンティシズムの拒絶。

初監督作にしてこの才気。おそるべし“オゾンのミューズ”。


☆3.7