散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

あなたの名前を呼べたなら

身分違いの恋、メロドラマの定型にもかかわらず、何も起こらない、起こってはいけないし起こり得ないことを強調するかのようなドラマチックを排した淡々とした語り口に、この恋に立ちはだかるあまりに高い壁を思い知らされる。聖人のように理解ある男性主人の人物造形にしても、どれほどのリアリティーを持つのか、切なる願いを託しうるものなのか。未だカースト制が根強く残るインド社会、ボリウッドの本拠地ムンバイを舞台に、いわゆる歌って踊るイメージとは一線を画す社会派ドラマは国境を越えて、賞賛を呼ぶ。一方で、昨今のイデオロギー先行、テーマ主義の復権にはやや違和感を隠しきれない。


☆3.7