散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ラセターさん、ありがとう

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「ミヤザキ-サン!」と呼び掛ける度にハグを求め、肩に腕を回し、ベタベタと過度なボディタッチをするジョン・ラセターの姿を見ていると、たとえそれが敬愛の表れだったとしても、例のセクハラ問題を想起せずにはいられないことが、まずとても悲しいことだった。

ただ、女性に限らず、誰彼構わずそのような過度なスキンシップで間を詰めるラセターの様子を見るに、権力を笠に暴力を振るう類のものとは少し性格の違う問題なのではないかという思いにも至る。他人との距離を見誤る、無邪気で自分本位な、まるで子どものような振る舞いにも見えたから。

宮さんは、それを“友情”として笑って受け入れている。

いずれにしたって、数々の許されない行為が多くの部下を傷つけたことに変わりはないし、合議制に生み出される数々の作品イメージと犯した過ちとのギャップに抱かれたショックが和らぐわけでもないのだが……このプライベートビデオによって明かされる素顔の一端が、人間の多面性を良くも悪くも両面において暗示するものとなり得ているとするならば……何と言うか、やっぱりやるせないな。

悲しいかな、“友情”のビデオレターを盗み見させてもらって思うことがこんなことである。


☆3.7

(2018/10/31)