散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

バベットの晩餐会

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曇天の空に海風が吹く辺境の村で、敬虔なプロテスタントの人々が静かな暮らしを送っている。質素で禁欲的で、清貧な暮らし。
アンデルセン童話やカラフルな街並みから連想するメルヘンなイメージとは別に、脈々とデンマークの大地で受け継がれる土着の風土。

静謐でザラついた北欧映画らしいテクスチャは、まるでカンバスに描かれる絵画の絵具の凹凸のように、そこに歴史の重層を感じられる深い味わい。
映画が崇高に“芸術”であろうとする態度が見て取れる。
それは恋愛であり、互いの正義の接吻であり、情事のうっとりとする至福である。

言葉よりも雄弁な“芸術”を介し、人と人は円満に認め合うことができる。
「おもてなし」は、異文化への深い敬意と寛容。真心を籠めた精一杯の振舞いのことを言う。


☆3.9

(2017/3/24)