散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

午後3時の女たち

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午後三時、三時半くらい。平日なら尚良し。やるべきことを放り出し、日常を抜け出す“昼下がりの情事”は、乾いた生活に多分の潤いを与える。
相応に支払う代償ももちろんそれなりに。しかし、虚しさに過敏な、うぶな感受性の持ち主にとっては必然の時間。

修羅場に鳴らされるロックンロールの、ディストーションの歪みを快楽的に聞いただろうか。建前が崩され本音が晒される悪夢に、破壊と再生の様を。
“悩んだまま躍る”人生の発露を。
堪え難き退屈な日常を、少しずつ、日々より良くあろうと苦心する他ない普通の人々。その反復にグルーヴは生まれ、同じことの繰り返しは幸福感を伴って発展していくことだろう。恍惚に導くセックスも同じ。

「あなたのためじゃない、私が幸せだから」
同情の取り扱いを心得ている者が差し伸べる優しさに、濡らす女。夫との見つめ合わない淡泊なセックスとも対比され、女の悦びが画面を通して伝わってくる。
他者の主観にカメラを介して同調する。映画の為せる業である。

助けていたつもりが、助けられてしまったことに気付く。
他人と目を見合って話し、乾杯する者は、自己の在り方をしっかりと見つめているものだ。


☆4.0

(2017/3/12)