散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

シモーヌ

アンドリュー・ニコルらしからぬコメディタッチに皮肉めいた風刺劇も、フィルモグラフィーを辿れば、脚本作『トゥルーマン・ショー』を反転させるようにして、人々の欲望を纏うばかりの虚像についてのシミュレーションを重ねたものとわかる。

モーションキャプチャーディープラーニングといった用語がもはや一般化しつつある20年後のリアリティからしても、先見の明であったというか、なるべくしてそうなりつつある過程にあって、決して古びた仮説ではないことを改めて確認する。

科学技術の進歩と共に発展してきた映画の歴史が、AIの登場によって一つの終焉を迎えることは想像に難くない。

全てが“作り物”によって置き換わり、芸術の領域さえ彼らに譲る時、あえて言うならさらなる退廃を免れない。芸術が崇高であったことなどなかったにしてもだ。


☆3.2