散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

アス

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ドッペルゲンガーものの潜在的な恐怖に、ボディスナッチャーものとしての寓意が重なる。ジョーダン・ピール、『ゲット・アウト』に続く社会派スリラーは、1986年を起点に現代に広がるアメリカの“影”、延いては世界を覆う構造的な格差社会の闇を描き出す。

「ハンズ・アクロス・アメリカ」に暴かれた博愛主義の偽善が、現在に至ってはメキシコ国境を隔てる“壁”となって、分断の象徴として符号する皮肉。

生まれながらの不条理、不平等への怒りや憎しみ。あるいはルサンチマンがトランプ支持やさらなる陰謀論へと結束していくアメリカの政治状況を対岸に見ながら、果たして誰が他人事のように笑っていられるとでも言うのだろうか。


☆3.7