散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ

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アメリカン・ドリーム」と言えば聞こえはいいが、そこは人々の際限なき欲望と悪意が支配する無慈悲なる淘汰の世界。夢や希望や、理念など掲げようものなら、そんな綺麗事は脆くも崩れ去り、勝利のみに価値は認められる。やったもん勝ち、勝ったもんが正義の弱肉強食。1人の勝者と99人の敗者を分ける非情な競争社会が、あるべき自然の摂理と言わんばかりに。

言い換えれば、経済的自由主義の極北。
この映画に描かれる対立は、アメリカにおける共和党支持の変質、宗教保守の道徳心が資本主義の誘惑に敗北していく変遷のようでもある。
そう、フランチャイズという悪魔のささやきによって。今や搾取構造とほぼ同義のシステムが海を越えて。ここ日本でも“ゴールデンアーチ”の灯らない町を探す方が難しいくらい。アメリカの病理はグローバリズムの号令のもと世界中に蔓延している。
まさしく、マクドナルドは現代の教会になり変わったと言えるのかもしれない。その非人間的なコンセプトを布教しながらである。

たしかに、安価なファーストフードは数多の恵まれない子供たちの空腹を満たしたことだろう。家族の憩いの場ともなりうる実際の風景を否定することもない。
ただ、効率化と均一化の果てに蝕まれる豊かさについて、考えるべき時期に来ていることも誤魔化しきれない事実である。

マクドナルドは家族である──というスローガンはアイロニーでしかなく。マイケル・キートン扮するレイ・クロックが決して英雄には映らない時代なのである。


☆3.0

(2019/01/09)