もはや頬を伝う涙も降りしきる雨とも判別はつかず。何処からともなく乱反射する照明に目を伏せ、夜のとばりにいつか見た夢の続きを。
いずれ死にゆく運命を知って、なお生き続けなければならないことの絶え間ない恐怖よ。
望まずして創り出され、天上人に仕える奴隷の如く、地獄の責め苦を負わされる人間の、あるいは人間になりきれない何者かの一生涯にわたる悲壮の。
我思うゆえに我ありて、過去の記憶が存在の証明か。
確かなものなどない上に、やがて全ては消えて無くなってしまう定めにあって、人間たるもの不死を願うか、その現実から逃避し続けるか二つに一つの哀れな末路。
西洋と東洋の入り混じった猥雑な未来都市に立ちこめる歪な叙情性。現在に見ても、最も説得力を持って描かれるあり得べき未来像としてのディストピアに明滅する映画的な構図の妙。
なんと美しく哀しいフィルム・ノワールだろうか。心に刺さった棘のように、どのシーンをとっても忘れることのない傑作なのである。
☆3.8
(2018/08/05)