「痛みを前に人は孤独だ」
現実に打ちひしがれる日々こそ、芸術の美を享受することができる日々であるという悲しい真実。
芸術家にも不幸を望み、その残骸の恩恵にあずかろうとする。
こんなことは久しぶりだ。夢を見るように映画を見て、虚構を内在化している。
時間から雑念から、すべての緊張から解放され、ただただ淡々と描かれるヴァン・ゴッホという一人の人間の悲劇的な晩節に没入し、その美しい筆致の底を流れる希死念慮や、表裏一体にある退廃の悦びに酔いしれる。
言葉にならない。すべきでもない、僥倖と言う他ないひと時だった。
☆4.5
(2018/05/07)