散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ヒトラーの忘れもの

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美しい青い海と空に囲まれ見渡される大地を、炎と黒煙と血の赤に染める戦争。
何度だって繰り返し言わねばならない、戦争に正義はないと。
戦争を善と悪で感情移入してしまったとき、その断絶は後世にいつまでも続く遺恨を残す。
その溝、囲い、あるいは壁に隔てられた隣人は憎しみだけを空転させる。
一度始めてしまった戦争が終わることなどあるのだろうか。

憎悪を抱かせることは簡単でも、罪が赦され和解するに至るには膨大な犠牲と時間を要する。
対立を生み出すことで支持を得る政治に正当性があるはずもなく。その非対称性によって、連綿と繰り返される悲劇の温床は保存され、いつだって未来を生きるはずの子どもたちが枷を負わされる。


☆3.7

(2018/1/30)