全カットにわたり徹底される絵画的な構図と映画的なダイナミズムへの狂信的なまでの美の術に酔いしれば、睡魔の誘惑には抗えず、甘美なる眠りに堕ちる。
光の海に身を侵かし、抱かれる。
雨音は止まず、生きる希望を失い、人生に疲れた者が悲しみと孤独を逃れる唯一の道。
欺瞞と偽善に満ちた耐え難きこの卑しい世界で、不可能の中にある幸福を夢見る。
社会の枠の外側で、虚飾の世界に籠城し、純粋無垢のロマンに安らぎを得る。
“平凡さを受け入れる素朴な人間の存在理由”に難儀する者の、夢と現と幻である。
「真の自由は特権的な自由とは無関係。万人のもので、誰もが手にする権利がある」
その真実が胸を抉る。
☆3.7
(2017/10/15)
