散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

パージ

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内なる暴力衝動が、人々を犯罪に走らせる主因であるとは思えないし、ガス抜きなら、代替装置としての祭りやスポーツの文化を人類は有史以来ずっと備えているのではないか。

現代の病巣は、グローバル化と情報化により疑心暗鬼のまま繋がってしまった故の、外部への不信。広がった格差による、下流への無知と上流への嫉妬。
脅かされる自己認識を守ろうと、排除の論理を働かせる。
それら「恐れ」から来る集団心理の暴走を鎮めるために構築されるべきは、寛容で安心な共同体の他にないはずなのだが、おぞましく浅はかで自ら人間の尊厳を放棄する行為を、我々は繰り返し選択してしまう。
不安感が支配する時世に、人は正しさよりも信じたいものを真実とする。フェイクニュース、或いはポストトゥルース、おまけにオルタナファクトでも何でもいいが、誤った認識に基づき扇動されたポピュリズムは強いリーダーを欲し、あっという間に全体主義への気運は高まる。

“パージ”によるユートピアの創造など滑稽であると一蹴する他ないが、現実の世界最高権力者の様を見ていると、どんなに愚劣で荒唐無稽な政策が打ち出されても、もうあまり驚けないところまではきている。


☆3.4

(2017/2/8)