散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-01-25から1日間の記事一覧

インランド・エンパイア

全体のストーリーは想定せず、2年半かけてアイデアの断片を撮り足し、再構成することで作り上げた180分の白昼夢。リンチ曰く、“about a woman in trouble” について。 ファントムの呪縛を撃ち破るロストガール。女優と娼婦をシームレスに繋げる「ロコモーシ…

マルコヴィッチの穴

ソニック・ユースやビョーク、ファットボーイ・スリムなどを手掛けたミュージックビデオ出身のスパイク・ジョーンズの映画デビュー作。脚本は、“脳内”宇宙を現実に写し出す奇想天外、世にも奇妙な物語のこちらも長編デビュー作、チャーリー・カウフマン。 7…

ミツバチのささやき

謂わば、1カットの無駄もない完璧な純粋映画。 巡回映画のロードショーで見た『フランケンシュタイン』を信じる少女。 人間社会は少年少女に、成長して大人になり、所属先を見つけ、党派性を帯びることを要請する。それら帰属意識から逃れ、イノセントを有し…

ゾンビーワールドへようこそ

たしかに、全くもってクールな存在とは言い難いボーイスカウト。でもそこは、学校という檻で強いられるヒエラルキーから逃れて友情を育むことが出来る貴重な避難区域。 「ガキの頃は楽しかった…」そんなつまらないセリフを吐くゾンビのようなオトナにならな…

クリムゾン・ピーク

深紅の血が滲む緑の屋敷に誘い込まれた純白のヒロイン。そこかしこに窺わせる暗示、幽霊は“暗喩”されるゴシック・ロマンス。 蛾の餌食となる蝶。 ☆4.0 (2016/06/04)

キミに逢えたら!

“終わりへの道 Vol.12”“失恋ミックス 僕の涙の10曲” 自分史を何よりも雄弁に語るオリジナルミックスCDが、見知らぬ何処かの誰かに届いてしまっていたら。恋のメロディが共鳴する女の子と出会うことができたなら。そんな奇跡は、ギュッと離さず“抱きしめたい”…

レイニング・ストーンズ

“誰にも働く権利がある”“仕事がない者を嘲る権利は誰にもない” どん底を抜け出そうにも、働く権利すら剥奪された労働者が犯した罪は、神の名のもとに許される。法を無下にする回答を選ばせるほどに、はためくユニオン・ジャックは信じるに値しない。 ☆3.7 (2…

女はそれを待っている

唯一にして決定的な性差である妊娠・出産について、期待、不安、悔恨、恐怖、悟り、孤独、受容、決意、希望、歓びほか、彼女たちだけが経験し得るありとあらゆる心身の葛藤。つまり、生を紡ぐこの世界に於ける主人公たちについて。産む、産まずの選択、産め…

女は女である

「悲しいの」 ホントは嘘で、ウソも真実で、裏腹な言葉も、ふくれっ面の笑みも、愛のミュージカルを踊る女は“une femme”ただ女なのである。罠にかけられ、はぐらかされ、それでも愛さずにはいられない男も、ただ男なのである。それは、悲劇なのか、喜劇なの…

好奇心

「ほうれん草テニス」も、文学デパートの特売場に並んでいるような自殺論も、神もしくは道徳心への反抗である。思春期に託けたタブーへの好奇心。ルイ・マル少年の実存。 自由の勝利が垣間見える無上の“爆笑”エンド。 ☆4.2 (2016/05/27)

欲望のあいまいな対象

「人生で最も大切なのは私自身」とその若い女。自由に我が身を弄ぶ女に対し、“あいまいな欲望”の囚われの身であるその初老の男。 愛について、男はいつまでも“純真無垢”なままである。 試され続ける情愛と愛欲の間。嗚呼、滑稽。 ☆3.9 (2016/05/26)

ザ・シャウト/さまよえる幻響

集音した自然音にエフェクトをかけて音響を作る前衛音楽家。「場面を変えたり最高潮に達する所を変えて」真実を語る精神病患者。 “人生は影で、人は演技をしているだけ” 事実を歪めて拡声するマイクロフォンに実体あり。 ☆3.0 (2016/05/25)

ビタースウィート

セックスもドラッグも、両親の離婚も自殺未遂も、暴行事件も同級生の死も、すべてはポップロックと共に流れ去る日常に過ぎず、友情だけが重んじて語られ帰結する、恐ろしいティーンのリアル。 ☆3.3 (2016/05/25)

フィッシュタンク〜ミア、15歳の物語

“鎖”に繋がれた白い馬を優しく撫でるその肌の感覚を伝えるように、15歳の少女を近くでずっと見つめ続けるカメラ。焦燥の中で、他人も自分も傷つけながらもがく姿の何かを非難するとすれば、それはあまりに近視眼的。彼女を取り巻く社会構造に目をやることが…

いとこ同志

恋に敗れ、その復讐戦にも敗れた若者には、自ら引金を引こうが引かまいが世界の終わりを迎える運命が待っているとするペシミズムは、当時のパリの街を覆う閉塞感なのか、或いは“映画”に対しての批評性に限る表現なのか、いずれもが合わさった産物なのか。ヌ…

愛と憎しみの伝説

我が子を自己愛のための道具として匿う母については、何もハリウッドの大女優に限らない、ごく平凡にある親子間の地獄。 完璧主義の母は、精神的にも他者の介入を許さない“潔癖症”で、衝突は絶えず、抑圧をばら撒く存在。その厚顔で、世間からの評価のみに虚…