散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

カオス・ウォーキング

余白のない、まるで映画的でないだだ漏れの感情にさらされ、自らの思考もその“ノイズ”の濁流に飲み込まれ消えていく。SNSに顕著な、稚拙で軽薄なコミュニケーションの寓意。一人で深く考えるといった機会は失われ、信仰と党派性に縛られた意思決定をあたかも自分の意見のように錯覚しては拡散する。情報社会における没個性化。堕落していく人間性を問うスペキュレイティブ・フィクションとも言いえるテーマを内在しつつも、あくまで本作のチャームはYA的西部劇に繰り広げられる青年の成長譚、トムホとデイジー・リドリーの初々しい恋の行方にある。


☆3.6