散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

シルバー・グローブ/銀の惑星

未完のSF超大作にして、ズラウスキーの集大成を見る記念碑的な一作なのではないか。『ポゼッション』の再現を求めては挫折を繰り返した日々も報われるかのようだ。

過去の鑑賞作品に比してもとりわけ難解なストーリーは早々に放棄し、トライバルなビート、哲学的なセンテンスの響きにただ身を任せ、カオスの海へ飛び込めばその深淵に、映画でなければ到達し得ない恍惚を覚える。そう、キューブリックタルコフスキーホドロフスキー、またはゴダールやと、わけもわからぬまま理解の範疇を超えてのめり込んだ、おそらくは芸術としての映画の神秘に触れられた気がしたあの頃の感受性が甦るかのごとく。狂気じみた狼狽のすべてがたとえ役者の空虚な“演技”だとしても、そこに真実の一片を感じ入る。なんと言うか、映画への無垢なる“信仰”が確信へ、愛となって還ってきたような。そんな感慨にも耽る、得難い映画体験の再来だった。


☆3.6