散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ワイルドライフ

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14歳──。少年は大人になる。

それは惨めな男の、生々しい女の性を目の当たりにしてしまっては戸惑い、傷つき、けれども強くなるための第一歩。父も母も決して完璧ではない、彼らも一人の人間であることを、そして自分もまた一人の人間として早晩自立していかなければならないことを知る。ある幸せな季節の終わり。
家族の崩壊と再生への激情が烈火のごとく、しかし静謐な映像詩に綴られる。

息子役のエド・オクセンボールド(『ヴィジット』のあのラップ少年!)の風貌からしポール・ダノの自己投影を見る彼の個人的な作品であるのはもちろんのこと、それは普遍的な家族の肖像にも違いなく、さらには60年代は激動の時代を予感させるアメリカ映画にも違いない。

ヨハン・ヨハンソンへの謝辞とともに切なくとも温かいエンドロールよりなおも続く余韻にあって、なんと繊細で趣深い傑作だろうかとの思いに至る。


☆4.1