一つのシークエンスに隠された謎の魅惑的なこと。
覗き見、盗み聞いた断片を編集し、繰り返し“読み込む”ことの詩的なこと。
無法に他人の秘密を盗み取るプロフェッショナル、そう徹することを阻むのは男の抱える人間不信と孤独。
薄靄に隠れた核心に深入りしようものなら、知らず知らずのうちに負の螺旋階段に引きずり込まれている。
この場合、良心の呵責や罪悪感など命取り。圧倒的優位の立場はいつしか逆転し、拭い去れない強迫観念がついに男を狂わす。
荒らされた住処を右へ左へパンするカメラ。その端っこで、ピアノとサックスの“対話”する音だけがジャジーに寂しく鳴っている。
☆3.9
(2017/3/07)