散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ナイト・ハウス

何もない。誰もいない部屋の、暗闇にただよう愛の残り香をたどる。

“無”へ引き寄せられる病者の見た幻。言ってしまえばトリアーの『メランコリア』とも同根の心象風景を映画という鏡像に重ね合わせる。つまり文字通り、一義的なメタファーとしての鬱映画。おそらくは多くの観客が宙ぶらりんのミステリーに困惑する頃、救済のカタルシスに望外の涙さえ浮かべている。見知った光景だ。愛の喪失に錯乱した悪夢が現実を侵食していく。わかる人にはわかる。でもこんなの本当はわからなくていい、死ぬことよりも恐ろしい悲しみなんてものは。

これでデヴィッド・ブルックナーも『ヘルレイザー』リブート版への起用が決まり、次々と新鋭がフックアップされるホラーの隆盛は衰えない。

 

☆4.0