散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

コピーキャット

映画が時代を映す鏡である以上、『羊たちの沈黙』にはじまる90年代サイコスリラーの隆盛も、そのジャンル的枠組みを超えて、当時の社会不安や犯罪史からの影響を無視することはできない。現に、シリアルキラーは実在するのだから。当然のように今も、いつの世も姿を変えて人間社会に潜む悪意に向き合わざるを得ない。嫌に生々しく、日常を脅かす恐怖。誰もが、少なからず不安症的な人間不信を抱かずにはいられなくなるほどの陰々滅々とした悪夢である。そんなものを何よりの娯楽作品として懐かしむ自己矛盾にも、一層の胸騒ぎを覚える。


☆3.7