曰く、“実存的な恐怖”。映画と現実が地続きに、その闇が一体となって混濁する“完璧な悪夢”。
何度背後を振り返ったか、部屋の四隅に目を凝らしたか。ゆっくりと神経をいたぶられるかのような不穏、もはや体に変調を来すほどの不安感に苛まれ、ついにはホラー史上に残るトラウマ表現を境にして息を忘れる。
緻密な脚本と画作りに暗示される数々の“兆候”は、逃れられない運命を物語る。人生そのものが予め定められた呪いのようでもある。
しかし呪いとは転ずれば祈り──。
抱えきれない罪の残像。あるいは膨れ上がる妄執。悲しみの無意識下に眠る狂気の現出。本作の、えも言われぬ祝祭感はその救済を意味する。悲劇の“再現”にこそ、魂を浄化するカタルシスは導かれるように。
それはバッドエンドの誘惑。
☆4.4