散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

エル ELLE

f:id:eigaseikatsu:20191103212047p:plain

サスペンスとしてはあまりに歪な、とはいえコメディと呼ぶにはブラックの行き過ぎた……複雑で多面的な、矛盾すらを孕んだ人間ドラマと言う他ない異様な語り口。あえて、所謂レイプリベンジものにジャンル分けしてしまうならば、他に類を見ない爽やかな読後感を衝撃と評すべき、無二の映画体験であったとも言える。

イザベル・ユペールの眼差しを借りて、すべての男を見下げるような物語の帰結は、さすが“女尊男卑”のヴァーホーヴェン映画に通ずる達観した視座。
女性が男性化することで同権を得ようとする似非フェミニズムとは全くもって似て非なる、真の自立と解放を成し得る女の姿を映し出す。病んだ男社会に染まり切った目で見ればそれはある種のインモラル、アブノーマルにも映る根源的な女性性への賛美を、異なる地平より見届けたい。


☆4.1