「愛している」の言葉も、「死なないでいて」という叫びも、遠く届かない深淵。
あらゆる明度の青が行き交う、彼の視界に。
絶望の記憶が絶え間なくフラッシュバックする、この町で。
青は過去を蘇らせる。
色褪せることなく。現在の風景に過ぎし日の情景は被せられる。
決して乗り越えられない悲劇。いや、そう願うことも許されない罪。
忘れようとも、癒やそうともせず。
変わらぬ喪失感にこそ確かな存在を──凍てつく心の片隅で、温もりに触れた日々の思い出を灯らせて。
その悲しみの風景にこそ彼は人生を保存しようとする。
砕かれた心に映り込む寒々しくも美しい青の風景……ならば、生きてゆけるかもしれないから。
☆3.8