散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ガール・オン・ザ・トレイン

f:id:eigaseikatsu:20190210183805p:plain

絶望を紛らわせるため。
喪失を埋め合わすため。
誰もが他人を頼って、言い換えれば他人を利用して、孤独な日々を和らげる。
それは相手も同じ。
あなたが彼を見ている時、あなたも彼に見られているし、他の誰かに見られてもいる。
自己愛という暴力的な欲望の眼差しに結ばれた関係において、彼女らは決定的に弱者の立場を逃れられない。

ある女性たちは理想の家庭に幸福を夢見た。救いを求めた。
柵に囲われた安穏な我が家に逃げ込んだはずが、そこは力こそが支配する檻の中であったら。囚われの身のまま愛の二面性に曝され続ければ、未来、過去さえも奪われる。
奪う愛は記憶をも支配し、相手の人生を欠落させていく。

エミリー・ブラントは悲しみの狂気を見事に演じ、女性撮影監督シャルロッテ・ブルース・クリステンセンのカメラが女性ゆえの痛みの表情に最接近する。


☆3.9

(2017/11/09)