散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

特捜部Q 檻の中の女

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感情移入とは恐ろしいもので、物語はどんな悪行にも情状酌量の余地を作ることが可能である。そして観るものを彼らの側へ、善の反対側へ立たせかねない瞬間を作り得る。
例外的なサイコパスを除き、どんな人間にも同情の隙間があるという幻想を抱かせる。
推理小説の場合、犯人の顔が明かされた時、つまり彼らの過去が語られる時、それは起こる。

闇に射す光は生暖かい。

現在進行系で続けられる再捜査により、過去系に終わっていた事件は現在完了、進行系へと並列されていく。
映画的な時制を有用して、一つ一つ手掛かりが積み上がっていく捜査の軽妙な語り口に、手堅く演出される緊迫感。バディムービーとしての萌えも申し分なく、読み応え十分の犯罪サスペンス。

ぜひシリーズ化を追いかけたい。
今更、善も悪も、正義もない。ただ事件を解決する他ない男の行く末を見たい。


☆3.9

(2017/5/13)