散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ライトハウス

まさか、『ウィッチ』を遥かに凌ぐ狂気の世界。ほぼ正方形の画面サイズに閉塞感を伴って、シンメトリックモノクロームは漆黒の闇に目の焼けるような光線をちらつかせる。断続的な重低音が打ち寄せる波しぶき、雨風、海鳥の鳴き声と共に禍々しくも甘美なサウンドトラックを醸成し、いつの間にか快、不快の転倒を起こす酩酊状態にあっては、こんなにも恐ろしいのに美しいという官能的で、神秘的な恍惚を迎えるのである。そして果てれば強烈な睡魔に襲われる。

実に視覚的で、聴覚的で、クラシカルな映画体験の復活。

当代きっての鬼才の名をほしいままにする怪作。


☆3.5