散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

最後の脱出

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地上より緑は消え、空の青は消え、波打ち際に響く笑い声も、鳥の歌声もない。人生の夢も希望も、そして愛も──。

枯れ果てた褐色の大地に、荒廃する人の心。力こそたった一つの正しさとばかりにそこはまるで西部劇のように殺伐とした、あるいは人間性を失った哀れな“ゾンビ”の共食いを見るような。弱肉強食の無法地帯に景気のいいミスマッチなBGMが銃声や絶叫と重なって響き渡る。

公害、大気汚染などの環境問題に、飽食と飢餓の時代の食糧危機、そして核戦争の恐怖といった6、70年代的終末論の古めかしいイメージ。しかし、まさしく21世紀の近未来を迎えた現在も、何一つ解決されない諸問題に加え、顕在化する海洋汚染、地球温暖化並びに異常気象と、かつての“フィクション”が未だ機能してしまう現実の風景が地続きに存在している。


☆3.4