散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ピアッシング

f:id:eigaseikatsu:20220104191711p:plain

村上龍が「原作者として120%満足している」ならば、私はミア・ワシコウスカの新たな魅力を引き出す──あるいは仮面を剥ぎ取る──怪作として120%の興奮を覚えている。

目元の深い皺は時に老婆にも、やはり妙齢の美女にも、まさか少年のようにもその横顔をクローズアップに晒す。トップレスはボディダブルであろうが、ボンデージにはみ出る臀部や太もも、その皮膚の質感にまで触れられそうなほど生々しく迫り来る肉体の表情を映し出す。

クローネンバーグ作品を経由して、不思議の国の少女が垣間見せる怪優としての一面。彼女へのフェティッシュな眼差し──他人の空似に膨らませる妄想──は増すばかりである。

『嗤う分身』のような無国籍的なレトロスペクティブ。『サスペリアPART2』を含むジャーロサウンドトラックに演出されるそれはロマンチックの狂気。そしてエロチックな歓喜

性癖と言うにはあまりにアブノーマルかつ病的な強迫観念に囚われた悪夢でありながら、キスやセックスでなど到底たどり着けないエクスタシーを叶える甘美。殺人衝動とマゾヒズムの転倒。命を弄ぶ究極的なロールプレイングに、これぞ恋愛の本質を突き刺すような攻守の反復に、緊張のち恍惚の悦びを禁じ得ない。


☆4.4