散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

THE WAVE ザ・ウェイブ

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夕暮れの平静を引き裂くように、サイレンは響き渡る。それが津波を知らせる緊急避難警報と気づくのに数秒、何かの間違いか、あるいは避難訓練ではないとやっと認めるのに数分、わずか10分のタイムリミットはすでに時を刻んでいる。10分……たった10分後には町が消え去る、その畏るべき自然の脅威とともに、防災設計の甘さ、過去の教訓を生かそうとしない人間の愚かさをまざまざと思い知らされるのだった。

なぜにこうも悲劇を繰り返す。相変わらずも、科学者の警鐘を軽んじる人類社会に襲いかかるディザスター。
現実に今も、“いつか”の危機を棚上げにして、見て見ぬ振りの知らんぷり、経済との折り合いに託けてその無策を押し通そうとする無様を嫌というほど目の当たりにする。

とかく、ヒロイックな家族愛に拘泥するうちは、(その延長にある)長期的視野に立った人類愛など理解されるはずもないが。


☆3.2