現在と過去、現実と回想、あるいは捏造された郷愁がアメリカの原風景に混濁する映像美。対位法的な音楽に分裂する情緒。その酩酊感には、“全てが揃っているのに何もない”、物質主義ゆえの享楽主義に溺れる人類の悲劇が重ねられる。
そんな悲劇の、得てして美しい悲劇の、眩さたるや。その儚さゆえの永遠たるや──。
死をも超越する永遠なる美の一形態を、映画という光の明滅に目撃しうるものだった。
デヴィッド・ボウイ、彼がその名の通り“星”になった(同様にニコラス・ローグも旅立った)今、時を超えて再生される物語の神話性。不変のカリスマはさらなる信奉を誘うのだった。
稀代のロックスターを映画史に刻むカルトムービー。思いがけずもそれは望外のクリスマスムービーの悦び。愛への渇望が呼応するのだった。
☆3.9