散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

デトロイト

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人類史の開始と共に続く混迷、止むことのない“自由か死”の戦争。
白も黒も、イエローもない。肌の色に問題の本質があるわけではない。権力と暴力による支配構造に安心を得る、哀れな神経症の猿の生態に違いない。それが彼らのサヴァイヴなのだから。
なくなることはない。時代が変わればマイノリティを入れ替えて、差別の歴史は続いていくのだろう。

という絶望、そして怒りの感情に支配される2時間強の映画体験。
キャスリン・ビグローをしても見出せなかった希望、あるいは彼女の力をもってして映し得てしまった憎悪がさらなる分断を加速させかねない問題作。
友と敵を繋げるはずの芸術が、友と敵を分ける現実に屈する無力感に打ちひしがれる。


☆3.5