散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

哭声 コクソン

f:id:eigaseikatsu:20190518085933p:plain

韓国映画お得意の、あの本当に嫌な手触りのするクライム・サスペンスがまた始まったかと思えば、ゾンビは出てくるわ、エクソシスト的展開を見せるわで、気がつけば予測不能のカオスに飲み込まれてしまっている。超常的なホラーの様相を呈する。

しかしホラーと言っても、恐怖の質感としては西洋のひんやりとしたそれとは一線を画す、やはりアジア特有の湿っぽく生ぬるい、それこそ日本人としても嫌に臨場感を共有しうる、じとっと重い空気が纏わりつくような。堪え難い不快指数を維持したまま、血みどろのグロテスクはもちろんのこと、國村隼のまさに人間離れした怪演にあてられること、なんと156分の上映時間は……まさしく悪夢。白昼の悪夢。

ただ、やはりと言うべきか、それも韓国映画らしくキリスト教をモチーフとした対立の構図に回収され、きちんと閉じていく物語だけあって、思いの外、後味はそう悪くない。

かの父親の犯した罪と罰について、憐れな“人間”に下される無情な運命について、すんなり飲み込めてしまうくらいには、神と“悪魔”に惑う我が身であるからして。


☆3.2