見てはいけない、という警告を無視して。こっそりと陰の方を覗き込もうと様子を窺う彼女もまた、陰の向こうの暗闇にすでに見張られている。
カメラの向こう側に潜む、無数の目に。飽くなき大衆の欲望に応えるように、闇の奥へ奥へと導かれる。
陰に影が重なり合い、画面は一層、黒を濃くする。
あの『ミツバチのささやき』のアナ・トレントの曇りなき眼。その無垢なる眼差しは、無垢がゆえに、恐怖に勝る好奇心と禁忌を破る背徳のささやきによって、人並みの汚れを混じらせるようになる。
その上で、イノセンスを失ってこそ見定められる人間の闇に、スポットライトは当てられる。
その光は、偶像に帰依する名画のそれと対をなす。
☆3.9
(2018/05/17)