散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

霧の中の風景

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タタン…タタン……タタン…タタン……
十二歳の少女と五歳の弟。二人は列車に乗り込み、会ったこともない父親を探す旅に出る。

舞台は資本主義の波に揺れるギリシャ。進む方向を見失った混迷の時代。
幼い二人が目の当たりにする世界の原理を、曇天の空に詠む映像詩。
目的の不確かな旅。ただ過程が続く人生という旅を生きねばならぬ子どもたちへ。必ずや大人になることを “強いられる”子どもたちへ。美しくも残酷なおとぎ話。

「こうしているのがずっと続けばいい」
たった一人の友は、兵役前の旅芸人の青年。

“始めに混沌があった。それから光が来た” 
二人は霧の向こうへ、川を渡る。


☆Review

(2016/08/22)