散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

人生は、時々晴れ

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「愛ってのはバケツに落ちる水の滴だ。独りの愛だと水は半分。満たされることはない。だから人間は孤独だ。独りで生まれ、独りで死んでいく」

階級社会イギリスの下層部を描く団地映画に、傑作は多い。 
どん詰まりに押し込まれた人々の人間模様には、何処も閉塞感が横たわっている。

経済的困窮に限らない貧しさは、最小単位の共同体、家族という繋がりにもしわ寄せられ、その軋轢が堪らず露見する。
鬱屈した日々の繰り返しに、切迫した問いが。
“All or Nothing”
表題がマイク・リーの哲学を逆説する。

「人生とは孤独感と、一人ではないという感覚が複雑に絡み合ったもの」

脚本のない即興演技の積み重ねによる、“誇張されたリアリズム”が射し示す一条の光に、深く首肯する。


☆Review

(2016/08/21)