散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

かもめの城

f:id:eigaseikatsu:20190121020438j:plain

少女の面影のままに映画界を去った、パトリシア・ゴッジ。

髪をアップに束ねてうなじを見せれば、ワンピースを腰のあたりでキュッと括ってくびれを見せれば、ぐんと大人びた表情を見せる年頃。
女の子のお人形遊びを卒業する頃合い。新しいパートナーは父のスーツを見繕った案山子。
少女は、初めての友に、初めての恋をする。命が宿った案山子に。

自閉的な性格の彼女は、人里離れた海辺の家で、籠るようにして父と暮らしてきた。正しくは、父が背負った“十字架” によって、娘はこの地に縛られている。
訪れる思春期の揺らぎの中、現れた案山子と外の世界へ踏み出すとも、都会の喧騒には耐えられず、安寧の城に帰ることとなる。

亡き母への執着は父と娘の間で重っており、長い相互依存の関係は簡単に断ち切れるものでない。
案山子の死は、父の贖罪を意味するのだろうか。少女は、かもめが旋回する囚われの城から巣立つ自由を得たのだろうか。


☆4.7

(2016/04/06)