散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

さよなら、人類

f:id:eigaseikatsu:20190121015124j:plain

原題“実存を省みる枝の上の鳩”は、有名な絵画「雪中の狩人」からの着想が窺える。
ロイ・アンダーソンは、その丘の上から、人の憐れを可笑しみの眼差しをもって描いてきた。
足掛十四年。前二作から成るリビング・トリロジー“人間であることに関する三部作”の最終章である。

散歩する惑星』ほどのブラック&シュールな笑いも、『愛おしき隣人』ほどの愛とファンタジ-も鳴りをひそめる今作は、平凡な孤独と悲哀を坦々と映し出す。唯一無二のアナログ美術が創る象徴界から抽出されたヒューマニズムが流れ込むように、動く絵画と我々の変哲のない毎日は地続きになる。

死は突然に訪れる。それでも明日はやってくる。アンビバレントな世界はそのままに。どんな不条理も讃歌にしてしまうユーモアこそ、人類が有する最強の知恵。


☆3.6

(2016/04/05)